株主の皆様へ
日清食品有限公司(以下「当社」)董事会(以下「董事会」)を代表し、当社および子会社(以下「グループ」)の2023年 12月31日終了年度の年次報告書をお届けします。
2023年は中国と香港においてパンデミックに対する規制が撤廃され、経済活動再開の年になりました。年初は経済回復への期待が強かったものの、徐 々に経済活動が鈍化し、景気の先行き不透明感が増し、消費マインドが低下する傾向となりました。このような状況の下、当社グループは、創業者 安藤百福氏の『食為聖職(食の仕事は聖職である)』という企業理念のもと、食の喜びと美味しさを通じて人 々の健康と社会に貢献してまいりました。
当社グループの売上高は、即席めんに対する消費マインドの低下、香港でパンデミックがなくなったことによる特需反動減、更に人民元安の影響により前年同期比 5.8%の減収となりました。一方、原材料価格の下落、物流コストや販促費などの販管費の減少により営業利益は前年比 2.2%の増益となり、営業利益率は 11.4%と前年比 0.9%ポイントの改善となました。当社株主に帰属する当期純利益は、2022年 11月に珠海永南食品の完全子会社化に伴う非支配持分の減少と日清ベトナムの連結化に伴い 5.6%増加しました。同利益率は 8.7%となり前年比 0.9%ポイントの改善となりました。当社グループは上場来 7年連続の増益となり利益成長を続けています。(注記:日清ベトナムの連結化に伴い、香港会計ガイドラインに基づき、2022年度の決算数字を遡及修正し前年比較しています)
2022年 7、8月に香港と中国でブランドロイヤリティ向上のために開始した会員制プログラム、Nissin Foodium(日清食品體驗館)は、対象商品を開始当初のカップヌードル(合味道)から各種日清の即席めんに範囲を広げ、登録会員は毎月増加しています。登録会員は WeChatの QRコードをスキャンしてポイントを貯め、特典景品と交換できます。当社はこのプログラムを通じて様 々な情報を集めながら新たな特典景品を作り、このプログラムへのリピートを高めたり、新商品開発につなげています。また、試食活動を中国全土で再開し、1年間で 3万回且つ約 500万人の試食を行い、日清ブランドや商品の美味しさの認知度を高めています。こうした地道なマーケティング活動が、日清ブランドの即席めんの購入のきっかけにつながっています。
中国本土市場は、過去 10年間で1人当たりの所得が増加し、消費の質の向上が人 々の生活に浸透してきました。加えて、香港、中国本土で価格、健康、栄養、食の安心安全への要求が高くなっています。開発チームはこうした状況の中で、製品の開発、新技術の導入、コストの最適化を行 ってきました。2023年は、日清チキンラーメンと日本フォーミュラのカップヌードルを発売し、中国本土や香港の消費者の皆様に新たな食の発見と楽しみを届けました。世界初の即席めんである日清チキンラーメンと世界初のカップめんである日本フォーミュラのカップヌードルの味を当社中国の工場で見事に再現し、消費者の皆様から好評を得ています。更に、フードテックを駆使しイノベーションを進め、植物性の代替肉の開発に挑戦しました。一部の動物性由来の資材を原材料に使用することは、一部の消費国の規制に抵触し製品の輸入や販売が許可されずビジネス機会損失につながります。植物性の代替肉は自然環境にやさしく、消費者の健康志向の高まりの中、今後需要が増加すると予測しています。こうした R&D活動を経験豊富な専門家集団で構成する開発チームがリードしていることは、明らかな当社の競争優位性の一つとなっています。
香港大埔工業園区に複数ある即席めん製造ラインを同じ工業園区の 1か所の工場に移設し、自動化機器と各種 IT装備の導入によりスマートファクトリー化を進め、省人化、作業安全性や製品品質の均質化の向上を行いました(2021年 5月概要公表)。また、生産を集約化することにより効率化し、生産能力を増強し、コスト削減を進めていきます。
2023年 6月 29日に日清ベトナムの持分約 66%を取得し連結子会社化しました。ビジネス範囲が中華圏からベトナムを含めた範囲に拡大しています。この日清ベトナムの子会社化により、香港・中国地区で培 った販売、管理、製造の人材やノウハウをベトナムに展開し、ベトナム市場の販売シェアを拡大します。加えて、2023年 12月から台湾に当社 100%出資の販売子会社を設立し、台湾の当社製品の販売を強化していきます。従来台湾の地場卸店経由で当社ビジネスの拡大を行 ってきましたが、販売増に伴い販売拠点を設立し、即席めんと非即席めん製品の更なる販売を拡大していきます。
創業者 安藤百福氏の『食創為世(食を作ることで社会に奉仕する)』という企業理念のもと、責任ある企業市民として持続可能な経営に取り組み、CO2など環境問題や地域社会の持続的発展に貢献しています。更に従業員の待遇、モチベーションやエンゲージメントの向上、多様性を考慮し長期的な企業価値創造へ繋げています。2023年、人的資本の強化のため、企業フィロソフィーのゲームをモバイルアプリ化し、ゲーム化されたコンテンツを使いデジタル学習を通じて、インタラクティブに経営理念や創業者の起業家精神の学習を推奨しました。企業理念や働く意義が共有され、会社全体が一体感を持つことを狙いとしています。こうした持続的経営の施策によって、MSCI社から ESG格付け Aで評価されました。
当社の取り巻くビジネス環境は、地政学的緊張が国際貿易と資本収支へ与える影響により不透明感が増すものの、香港や中国本土の着実な経済成長により明るい兆しが見えてくると信じています。
中国事業ではカップヌードル(合味道)や高価格帯袋めんである出前一丁、日清ラ王、日清チキンラーメンの販売拡大を目指します。更に、即席めんの販売数量を拡大するために、地理的な販売網の拡大や卸店の発掘を継続します。また、非即席めん事業は、卸店事業や飲料事業の拡大に努めていきます。
香港事業は 100%北海道産小麦粉使用の出前一丁、日清ラ王、日清チキンラーメン、米めんのベトナムフォーや様 々な高価格帯袋めんの販売拡大に注力しています。冷凍食品に関して、冷凍ラーメンや冷凍点心のプレミアム品の販売の拡大に取り組み、更に香港へのインバウンド旅行客が回復基調にありケータリング産業への販売も強化します。
2023年度に連結化したベトナムビジネスは、自国マーケットの販売の強化のため、販売チャネルの拡大を目指します。台湾販社は取り扱い卸店や主要小売店との取引拡大に努め、更にマーケティング活動を行いながら日清ブランドの認知度を高めて、販売ボリュームの向上に努めます。
グループの運営と組織を効率的に発展させ、事業の成果を最大化を目指し、当社の株主や投資家を含むすべてのステークホルダーに長期的な価値の創造を実現して参ります。そして、当社グループは地域社会の持続的な成長に貢献していきたいと思います。
このような目標を念頭に置き、創業者 安藤百福氏の『食創為世(食を創 って社会に奉仕する)』という企業理念のもと、美味しく安全で求めやすい食を通じ、消費者の生活を豊かにしていきます。
安藤清隆
董事長